「野火」 塚本晋也監督トーク付き上映@フォーラム山形

11月4日(土)、山形市のフォーラム山形にて「野火」塚本晋也監督トーク付き上映が行われました。
「野火」は作家・大岡昇平のフィリピンでの戦争体験を基に書かれた同名小説を塚本晋也監督が映画化したもので、2015年に劇場公開されました。以降、戦争を知らないもっと多くの若い世代にこの作品を観てもらいたいという思いから「塚本晋也、皆さんに会いに行きます!プロジェクト」と題した全国キャンペーンを実施。塚本監督自ら、全国の映画館を周り「野火」の上映活動を精力的に行っています。
フォーラム山形での上映は昨年に引き続き今回が2回目。今年は「ぷらっとほーむ」もこの活動に協力し、前売券の普及をはじめ、当日に向けての準備・関連企画が進められました。以下は、「野火」塚本晋也監督トーク付き上映とその関連企画の記録です。

◆「野火」事前学習会
映画の上映に先がけて、「ぷらっとほーむ」では「野火 事前学習会(以下、事前学習会と略記)」が9月29日から10月27日にかけて、毎週金曜日に行われ、フリースペースに集う若者が中心となって参加しました(全5回)。
1回目の学習会では「野火」を鑑賞するにあたり、映画について、あるいはそれに関連する事柄で知りたいことを参加者同士で出し合い、今後の「事前学習会」の予定を組んでいきました。その1回目で決まった内容に沿い、2回目は「70年前の戦争」をテーマに、日本が経験した戦争について振り返りました。3回目は「北朝鮮」というテーマで、最近よくニュースでも耳にする北朝鮮という国について、その歴史や諸外国との関係性などについて学びました。4回目のテーマは「ファシズム」。ナチス・ドイツを例に「ファシズム」とはどのような政治なのか、また、どうして「ファシズム」が誕生したのか、その背景を探りました。そして最終回となる5回目の「事前学習会」は「現在の日本」をテーマに、10月22日(土)に行われた衆議院選挙の結果について、参加者同士でざっくばらんに語り合いました。
全5回の「事前学習会」を通し、今の日本の置かれている状況がいかに戦前の日本に近いかを知り、とても恐ろしい気持ちになったと同時に、自分たち国民の政治に対する無関心さがこうした状況を作り出しているのだと知りました。
◆「野火」塚本晋也監督トーク付き上映 当日
「野火」塚本晋也監督トーク付き上映は、当日多くの来場者で賑わいました。
映画は、第2次世界大戦末期のフィリピン・レイテ島を舞台に、塚本晋也監督自ら演じる主人公・田村一等兵の悲惨な戦争体験が描かれます。アメリカ軍の攻撃だけでなく、食糧も不足し、強烈な飢えに苦しむ田村一等兵ら日本の兵士たち。極限の状態に置かれた彼らの運命はどうなってしまうのか。戦争の恐ろしさを肌感覚で実感できるような、圧倒的内容の作品でした。
上映後にトークショーということで、塚本晋也監督と「ぷらっとほーむ」共同代表の松井愛さんがステージに登壇。塚本監督からは、この映画に対する想いや制作に至るまでの道のりなど、松井さんからは、過去3回にわたってドキュメンタリー映画「ひめゆり」を自主上映してきた立場から、どうやって若い世代にこうした映画を届けられるか、それぞれお話いただきました。
塚本監督は高校時代に「野火」の原作小説と出会い「いつかこの作品を映画にしたい」と心に決めていたそう。そして2011年の東日本震災や原発事故に端を発する社会情勢の急速な変化、将来への危機感などから、本格的に「野火」の製作に着手し始めたのだそうです。長年温めていた作品だけに、そのこだわりは細部にまで至り、実際にロケをフィリピンで行ったり、戦争の悲惨さを表現するため、あえて積極的に残酷なシーンを取り入れたりしたそうです。
松井さんは、会場にいる皆さんが、家族や友達、誰か一人をここに連れてくれば、それだけで今の倍の人数が集まることになる。地道けれど、一人ひとりがそうやって日常の中で色んな人を巻き込んでいくことによって、運動というものは徐々に大きくなっていくと語りました。
将来を良くするも良くするも悪くするも、市民一人ひとりの行動次第。今回の上映会は、市民活動について考える・学ぶ貴重な機会となりました。
スポンサーサイト